マシニングセンタには必須の周辺機器、ATC。自動でツールを交換する大変便利な機器ですが、メーカー、機種によって様々な違いがあり、いまいちメリット・デメリットが分かっていない人が多いのではないでしょうか?
今回はそのATCについて、どのような種類があるのか、メリット・デメリットについて解説していきたいと思います!
そもそもATCとは・・・?
マシニングセンタは目的の形状を加工するために様々な工具を使用しますが、それらはすべてプログラムに沿って自動で交換されます。この時に使用されるのがATCで、マシニングセンタに必ず搭載されています。
また、ATCとは別に工具を保管するツールマガジンと呼ばれる場所も存在します。ツールマガジンから次工具を呼び出し→ATCで主軸工具と交換、というのが工具交換の一連の流れです。
工具交換の時間は加工に全く関連しない無駄な時間です。ATCは早いほうがよく、また、絶対に失敗しない確実性が求められます。
ATCの種類一覧
ATCには下記のように交換方式がいくつか存在します。各方式にメリット・デメリットがあり、どれがいいとは一概には言えません。
交換方式 | 動作のしかた | 備考 |
---|---|---|
アーム方式 | アーム旋回振込み式 アームスライド・旋回式 | 最もメジャー |
主軸直接アクセス方式 | 主軸動作により工具交換 | シンプル、安い |
①アーム方式
最も一般的なATC方式です。下図のようにATCアームと呼ばれる腕が主軸工具と次工具をつかみ、回転し、工具どうしを交換します。構造は比較的煩雑になり、部品点数・コストは増大します。
②主軸直接アクセス方式
主軸直接アクセス式はATCマガジンから主軸が直接、工具を交換する方式となります。
アーム方式とは違い、ATCアームが存在しないシンプルな構造なのでコストが低く、メンテナンスも比較的容易です。ただし、円形のATCマガジンが必須となり、機械サイズが大きくなりがちです。
FANUCのロボドリル、ハームレのCシリーズなどで採用されています。
ツールマガジンの種類一覧
ツールマガジンとはATCで交換する工具を保管しておく装置です。このツールマガジンにもいくつかの種類があり、それぞれ特徴があります。なお、このツールマガジンの保管本数はオプションで変えられる場合が多いです。マシニングセンタの運用方法に合わせて調整してください。
構造 | 設置場所 | メリット |
ドラム式 | 機械本体 | シンプル、割り出しが早い |
チェーン式 | 機械本体 | 設計自由度が高い、効率的 |
マトリックス式 | 別置き | 大量のツールを効率よく保管できる |
①ドラム式
ドラム式とは円形の面板の周りにツールを保持するポッドと呼ばれる部品を取り付けたものです。構造がシンプルでポッドを割り出す速度も速いため、量産機によく使用されます。しかし、円形という都合上、多くのツールを収納しようとすると大きな直径が必要となり、多くのスペースが必要となってしまいます。
②チェーン式
ポッドをチェーンのような部品で繋げたものです。構造は比較的複雑にはなりますが、ドラム式と違って経路を自由に設定することができ、設計自由度がとても大きいです。また、ドラム式よりも省スペースで大量のツールを収納することが可能です。ただし、次工具のポッドの位置によっては割り出しに時間がかかってしまうことも…工具の収納順に注意が必要です。
③マトリックス式
ポッドを下駄箱のように並べ、ガントリーローダーなどでポッドを運ぶ方式です。
コストは高いですが、大量の工具を効率よく保管することができ、長時間の運転に非常に有利です。
長時間の無人連続運転を前提とした機械に搭載されることが多く、自動化専用のツールマガジンと言ってもよいかもしれません。
なお、ガントリーローダーを使用しているので、ツールマガジンへの工具の出し入れに地味に時間がかかってしまいます。これが地味にイライラします。
まとめ
今回はマシニングセンタに使用されるATCとツールマガジンの種類についてまとめました。
- マシニングセンタにおいて自動で工具を交換する装置のことをATCと言う
- ATCは単体では機能せず、工具を保管するツールマガジンと一緒に使用される。
- ATCとツールマガジンには様々な種類があり、メリットデメリットがある。しかし、マシニングセンタによってその仕様はある程度決められており、ツールの保管本数しか選択できない場合が多い。
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